エプソン様のパソコン「Endeavor Pro Series」のプロモーション映像を企画制作いたしました。
本作では実際にEPSON Endeavor Pro 8100 というハイエンドモデルをお借りして、そのマシンを撮影に使うだけではなく、実際に使用して映像を作っています。本記事ではその映像の舞台裏と、制作に使用したマシンのレビューをまとめてみました。

 

Planning – 企画

まずは企画からはじまります。エプソンのパソコンといえば、コンパクトなオフィス向けPCや、最近だとタブレットPCなどが有名で、 ハイエンドなPCはどちらかと言えば知名度があまり高くない印象がありますが、実際には映像制作にも耐えうるスペックのマシンもラインナップされています。

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そこで、本企画では「エプソンのハイエンドPC」の存在を知らしめることを目的として、CGクリエイターやデザイナーとの関わりを描く作品を作ることにしました。
そうして、タフさをアピールする「大気圏突入」案や、美しいビジュアルで表現する「影絵」案などいくつかある中から、一番人に寄り添っている本案「クリエイターを支える」編が採用されることになりました。

本作では今まで、Ustream番組「Adobe映像塾」で「AE手品」と題してAfter Effectsを使ってお手軽VFXなどおもしろ映像を作るというコーナーでやってきたものを、ネタの雰囲気は変えずに”本気でやる”というのを一つの目標にしました。短期間、少人数での合成作業は従来通りですが、丁寧に仕上げていきます。

 

Shooting – 撮影

今回、撮影まわりとコーディネートをAE研究会などでもお世話になっている林和哉さんにお願いしました。

主人公はデザイン会社に勤める若い男性。あと一息で完成という映像を、After Effectsを使用して制作しているところです。(決して深夜残業ではないと信じています)
男性役を演じるのはエイジレオンリーさん。タレント業もこなしつつ、ご自分で制作にも関わることができる、とてもマルチな方です。ぱっと見で自宅と感じてしまわれないように、衣装はスーツ風なカジュアルでお願いしました。

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Endeavorにおねだりする猫として作中に登場したのは、タレント猫のトムちゃん。まだ子猫の面影も残っていてちゃんと演技をしてくれるかどうかが不安でしたが、数テイクののち、見事なおねだりっぷりを披露してくれました。

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撮影はRED DRAGONを使い5K RAWで収録し、SHOGUNでProRes HDを同時収録しています。
ProResで同時収録しておくことでPremiereで仮編をすぐ行って、出来上がったらAfter Effectsにコピペで移行、最終的にCGと合わせる際にはR3Dに差し替えるというワークフローができて非常にスムーズでした。

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最終出力はフルHDですが、5Kを縮小することでノイズを大幅に低減し、さらに縮小前に一度デノイズもかけているので、合成作業もしやすい非常に繊細な絵に仕上がっています。
Youtubeの圧縮クオリティでしかお見せできないのが残念なくらいですが、その綺麗さはWebで見ても十分活かされています。

CG合成に備えて収録しておくのは現場のHDRイメージです。フィッシュアイレンズを使い半球をブラケット撮影で収録します。こうしてHDRIを撮っておくことで、3Dオブジェクトへの映り込みやライティングをCGに反映させることができます。
非常に細かいですが、ロボットのレンズやアームのメタル部分に風景が映っています。

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また、HDRIのほかに合成用のリファレンスとしてカラーチャートを置いて撮影も行っておくと、より後のマッチングがしやすくなります。

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3D Model & Animation – モデル制作とアニメーション

今回、パソコンが変形するということでロボ部分をデザインする必要がありました。
ロボットのデザインをジラフビジョンさんが行い、加速サトウ氏がテクスチャリングと細部のデザインをブラッシュアップしていきました。

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アーム内側を走るケーブルが加速氏のこだわりポイント。(実際にはほとんど見えませんが…)

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レンダリングはVrayforC4Dで行いました。
Vrayには分散レンダリングのDR(Distributed Rendering) があり、ネットワーク上にあるPC/Macに載っているCPUパワーをまとめてレンダリングに費やすことが出来ます。
今回は10台ほどのマシンを接続してレンダリングを行いましたが、Team Renderと同じように無駄がなく、非常に高速で助かりました。

 

Compositing – コンポジット

CGと、実写映像を合わせて仕上げていくのがコンポジット作業です。
Vrayで書き出されたCG画像は32bit EXRの連番になっていて、コンポジット作業はすべて32bit リニアワークフローで行っています。

HDRIの効果もあり、素のレンダリング状態でもかなりマッチしています。
そこからホワイトバランスなどを調整し実写映像と完全に違和感のないように合成していきます。

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合成のチェック方法として、全体の彩度を一時的に限界まで上げて色のバランスを見たり、露出を上下させて明るさのバランスを見ることで合成のマッチング度合いを確認することが出来ます。
CGに限らずフォトレタッチなどでもおなじみのチェック方法かと思います。After Effectsにはコンポジションパネルの下部に露出調整があり、エフェクトをかけることなくチェックできます。

CG部分からは新たに影が落ちるため、これらもうまく合成していく必要があります。
基本的にfixの映像なので、それほど高度なことをする必要はありません。シャドウのパスを別途書きだし載せていくのですが、腕やタブレットなど凹凸のあるところは3D側で同じ形を作っておくか、影にマスクを切り凸凹に対応した形で載せていきます。

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CGにはモーションブラーを付けていないので、RSMBを使用してあとからモーションブラーを付加しました。
そして、レンダリング時間との兼ね合いでCGには静止ノイズがうっすらとのっています。合成後にその違和感を減らすため、上からノイズを若干追加しました。

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画面ははめ込み合成です。After Effectsでの作業をキャプチャし、画面部分に載せ、頭などを切り抜きマスキングしています。ちなみに主人公が制作しているのはミュージックビデオのようですね。

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最終的なカラコレもAfter Effectsで行っています。
さきほどのノイズに加えてディフュージョン、カラー補正、ビネットを効果的に加えて仕上げています。

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Music & Sound – 音楽制作

今回楽曲を制作していただいたのは、CM音楽などでもご活躍されている益田泰地さんが担当しています。
当初はコミカル・和やかな雰囲気の音楽で考えていたのですが、益田さんから届いた音楽があまりに刺激的だったので、そのまま採用させていただきました。ぜひヘッドフォンなどで聴いてみてください。

SEとミックスはAdobe Auditionを使用しています。
直感的にミックス作業が出来るだけでなく、付属のエフェクト・プラグインも使い勝手が良くてとても助かっています。

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タイトルに被る、猫がご飯を食べる音は、現場でも収録しましたがインパクトが足りなかったので撮りなおしています。
その音は実は人がスナックを食べる音やお菓子をゴソゴソと探る音の合わせ技。マイクの前で加速氏がボリボリと食べる音を採用しています。こうして似た音を探して収録するのも楽しいですね。

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Review – Endeavor Pro 8100 レビュー

さて、エプソンさまからお借りして実際に制作に使用したマシン「Endeavor Pro 8100」のスペックは以下の通りです

・Intel Core i7 Extreme Edition i7-5960X 3GHz x 8 Core / 16 Thread
・64GB DDR4 Memory
・NVIDIA GeForce GTX 770
・256GB SSD + 2TB HDD + 512GB SSD

CPUやメモリに関しては言わずもがな、非常に快適です。Cinema 4Dのレンダリングでは8コア16スレッドのパワーをフル活用してくれますし、After Effectsではコア数よりも高クロック+大容量メモリが重要になってきますが、Turbo Boost時3.5GHzのコアクロックと64GBのDDR4メモリがあるので、特に2D,3Dどちらも使用する人にとっては現状この上ないチョイスだと思います。

個人的に大好きなのはHDDフロントアクセスです。

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作中では猫のご飯が入っていましたが、ここに4つの取り出し可能な3.5インチベイがあります。
いちいちカバーを開けて、扱いにくいところに刺さっているネジを回して交換するといった手間が全くなく便利です。
僕はAfter Effectsのキャッシュ専用に高速なSSDを追加しました。もちろん2.5インチ用のねじ穴もあります。

最新モデルはM.2 SSDにも対応しているので、システムデータをマザーボード上のM.2に入れ、残りの4つのフロントベイをデータ保存用としてRAID構成にしたりもできるようになっています。
また映像端子としてDisplayportがあるので、快適な4Kモニタで作業を行うことが出来ます。

EPSON – エプソン製品の強み

エプソンのPCを選ぶ一番の理由は何か?それは間違いなく「安心」だと思います。
エプソンの製品は様々な業種・業務で使われているので、仕事で使う事に関する安心感はやはりずば抜けています。
BTOなどのパーツはきちんと組み合わせによる実証テストがすんだ物を用意していますし、輸送時の対振動・落下試験なども実施されています。
また、PCが壊れたときに迅速なサポートや翌日修理なども受けられるので、本当にいろんな面で安心できるというのがエプソンのPCの強みだと思います。

実際、自分でパーツを組み立てたマシンや、ハイスペックを謳うオーバークロックなどのBTOマシンは、相性問題や故障率などの点で困ることが多々ありますからね。。
仕事道具として使う上でそういった不安を持ちながら作業をするのは精神衛生上もよくないので、心当たりのある方は一度検討してみるといいのではないでしょうか。

CAST
Man : Eiji Leon Lee
Cat : Tom (ZOO Pro)

STAFF
Director : Tatsuro Ogata aka llcheesell (Composition Inc.)
Camera : Shu G  Momose
Light : Hiroshi Ota
Sound Engineer : Ryoma Ochiai
Assistant Director : Naoto Wakamatsu
Shooting Supervisor : Kazuya Hayashi
Production Manager : Koji Yokokawa
Assistant Production Manager : Midori Kobayashi
Assistant Production Manager : Rina Taniguchi

3D Model Design : Lao Xiaojun (Giraffe Vision) / Kasoku Sato
3D/Animation/Rendering : Kasoku Sato
Compositor : Kasoku Sato / Tatsuro Ogata
Illustrator : Molesko Studio
Screenplay Draft : Naojiro Yasui / llSoup.ll

Music : Taichi Masuda
SFX/Sound Mix : Tatsuro Ogata

Executive Producer : Kiyomichi Arai
Special Thanks to: Adobe Systems Incorporated

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